鍼灸師向け解説

ムチウチ症 寝違え【頸椎捻挫】の鍼治療

はじめに

北京堂鍼灸の肩こり、首こりの鍼治療は、頸部と肩上部の筋肉を徹底して緩めることで、大きな効果と効率の良さを重視しています。

少ない本数で低刺激に鍼治療すれば、患者さんの負担も少ないと思われがちですが、

鍼の本数を多くして、しっかり治療することで、早く辛い症状から解放され、結果的に治療回数が短縮できます。

少ない回数になれば、時間的にも、精神的にも、金銭的にも負担が少なくなります。

「時は金なり」ではありませんが、現代人にとって休日の時間は大切な時間です。

少ない回数!短い期間!で改善させて、本人に再発を防げるよう、ケアのやり方を覚えてもらうことを当院では目標としています!

「そんなんじゃあ、治ったら来なくなるだろ?」と考える治療者の方も多いと思いますが、

「治すことに徹底している」という信頼こそ大切だと私は考えます。

それに、私自身が受けたいと思う治療院は「時間をかけない、回数をかけない、必要なケアを指導してくれる」ことが理想です。

自分自身が受けたい治療を行わなければ、自信をもって患者さん勧めれません。

これから鍼灸師として技術を習得する中で、北京堂鍼灸(浅野式)の鍼治療が少しでも参考になればと思います。

ムチウチ症 寝違えについて

ムチウチ症や寝違えは、不意や睡眠時などの、頸に力を入れていない状況で起こる、インナーマッスルの障害です。

ボーとしている不意や、睡眠時は脱力状態です。そこに外力や無理な姿勢が加わることで、細かい筋肉を傷めます。

意識があり頸の筋肉に力を入れてる状態だと、アウターマッスル(表層の大きい筋肉)が緊張しているので、よほどの外力が加わらなければ痛めません。

痛めるとしたら、事故や格闘技、ラグビー、などで過度に頸に負荷がかかり痛めます。この場合はアウターマッスル単独か、インナーマッスルも一緒に痛めます。

  • 板状筋
  • 多裂筋
  • 半棘筋
  • 棘間筋

ムチウチ症や寝違えで痛めるインナーマッスルは、主に脊椎に付く細かい筋肉です。回旋筋、頸半棘筋、多裂筋、棘間筋、上後鋸筋などの肋骨と脊椎や、上下の脊椎間に張る筋肉です。

インナーマッスルを痛めた場合は、痛みが局所的でピンポイントに痛みを感じます。痛む付近の筋肉を押して確認すれば、痛めた筋肉上に圧痛を確認できます。

アウターマッスルの場合は、僧帽筋や半棘筋、板状筋などを痛めますが、ピンポイントの痛みではなく、「このあたり」といった感じに広く」痛みを感じます。これは痛めた筋肉自体が大きいからです。

小さい筋肉を痛めるとピンポイントに痛み、多くなると痛む位置が広く感じます。大腰筋や腸骨筋などの深部の筋肉は、自分では痛む位置がハッキリわからなくなります。

ムチウチ症、寝違えの鍼治療

今回は一番多いタイプで説明します。しかし、ムチウチ症や寝違えは、いわゆる「外傷」です。外力が作用して起こるものなので、必ず同じようには痛めません。

よく患者さんから話を聞いて、痛む位置や動きを確認して、圧痛を確認してから刺鍼していきましょう。

「頸が回らない、動かすと痛い」といったインナーマッスルが原因のムチウチ症、寝違えについての説明です。

痛む場所はピンポイントに感じますので、確認して圧痛部は灸点ペンで印をつけます。

圧痛部に印をつければ、痛めた筋肉の走行がわかります。その印を中心に5ミリ間隔ぐらいで上下左右に刺します。痛めている部分は鍼が届くとズキンとした痛みを感じますので、反応があればさらにその横まで刺します。

鍼は5番の鍼で十分です。鍼の刺激に弱い場合は、本数を少なくして加減します。鍼を浅く刺して加減しようとすると、インナーマッスルに届かずに効果が出ません。

痛めている筋肉は、骨から5ミリぐらいの間にあることが多いですので、必ず骨に当てて止めることで、安全にしっかり筋肉に当てれます。

黄色が圧痛部 赤点が刺鍼位置

圧痛部の刺鍼が終われば、患側側の頸部刺鍼と背部狭脊も刺鍼します。下の図の青い点が刺鍼位置。

寝違えを起こして、時間がたてば経つほど、周りの筋肉は痛みによる防御反応で筋緊張が強くなりますので、一緒に緩めておくと効果が大きくなります。

【注意点!】 脳のメカニズム的に、1番痛いところを認識しやすくして、2番目以降を感じにくくする反応が起こります。初回で一番痛い部分を治しても、痛む位置が移動したように出てくるのは、これが原因です。一番が良くなった分、2番目が1番に繰り上がるからです。

寝違えなどの痛めてすぐなら、1回で治りますが、強く打ちつけたムチウチ症などは、痛む部分が移動したりするので、回数が少し多くかかります。

アウターマッスルが痛む場合は、肩こり首こりの治療と同じです。

刺鍼

図の点の位置が刺鍼ポイントになり、頸部を中心に僧帽筋や起立筋にしっかり刺鍼します。詳しくは↓の肩こり治療を確認してください。

置鍼と説明

治療内容と同じぐらい重要になるのが、「置鍼時間」と「治療の説明」です

置鍼時間について

鍼を刺して約10分以上すると、軸索反射による血管拡張が起こり、筋肉内の血流が改善されることで、筋肉は弛緩します。

なら鍼を刺して10分の置鍼でいいのか?駄目です!

血管拡張が起こっている状態を長く続けることで、筋肉内のうっ血した血液(酸素もATPも少ない)が血管に流れ、新鮮な血液(酸素とATPを多く含む)が新たに筋肉内に入ってくるのです。

10分経過したところからがスタートです!当院では約35分置鍼を行います。35分~40分ぐらいが、うつ伏せでいられる平均的な限界だからです。

ほんとかなと思う方は自分で腕や足に刺鍼して試してください。

ついでに、多く鍼を刺す鍼治療と、少なく差す鍼治療でも違いがはっきり出ますので、それも自身で体験するのがいい経験になります。

説明について

鍼治療についての説明はとても重要です。なぜなら、北京堂鍼灸の鍼治療は他の鍼灸院と比べて、「多く、深く」刺鍼するからです。

治療前には、「筋緊張が強いところほど、ズーンとした鈍い痛みが強くなる。これは筋肉の緊張が強いところほど、鍼が刺さって通過するときの摩擦が大きいからです。」ということを説明します。

これを説明しないと、「なぜ痛い治療をするのか?鍼を刺して、痛いところと、痛くないところがなぜあるのか?」と感じます。

治療後は、「鍼を刺したところは、鍼を刺したダメージで筋肉痛のような感覚になっている」と説明する必要があります!

これは鍼を多くしっかり刺すことで、「筋肉を緩める」ことと、「筋肉疲労を伴わない筋肉痛(筋肉修復)」状態になるからです。

筋肉痛の状態になると、1~2日ぐらいかけて一気に筋肉が回復して、柔らかい柔軟性のある筋肉になります。

筋肉が緩んでいる状態で修復するように、鍼治療後は「運動や痛い動きをせずに、痛くない体勢でゆっくり休むこと」が大切になります。

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