症例解説

脳梗塞後遺症 左片麻痺

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脳梗塞後遺症 左片麻痺

70代 女性 脳梗塞(脳幹梗塞)後遺症

昨年末に脳梗塞(脳幹梗塞)が起こり、脳外科に入院。血栓溶解療法で梗塞部を改善させるが、左手足に麻痺が残る。病院でリハビリを行い、退院したが左の手が痙攣するように筋肉が収縮する。力も入りずらく、ものが握れない。常に手首に痛みやむくみが出てつらい。現在も通院で歩行訓練は行っている。少しでも左手の痛みや動かしずらさが緩和できたらと思い来院した。*後になり回転性のめまいがあることがわかります。

来院時の状態

来院時の歩行は比較的安定していて、軽い介助での歩行で入室。左手は痙性麻痺と振戦を合わせたような連続的な筋収縮が、尺側手根屈筋と深指屈筋で繰り返し起こる。正中神経支配の筋肉が減弱しており、力が入らないのでOリングが作れない。尺骨神経支配の手掌の筋肉の筋収縮が強く、MCP,PIP,DIP関節(指の関節)の屈曲伸展ともに筋緊張による制限あり。手首の背面に痛みと指先に浮腫がみられる。

鑑別、説明

左手の痛みと浮腫については、痙性麻痺の繰り返し痙攣のような筋収縮によって腱鞘炎のような状態になっており、腱鞘炎の炎症により浮腫が起こっていると思われる。脳梗塞を起こした場所が脳幹部らしく、臨床例が多くないので、一般的な脳梗塞の施術と振戦の施術を組み合わせて施術を行っていくと説明。

経過

鍼治療1回目

鍼治療が初めてなので、全体的に刺激を少なく行う。左前腕の屈筋群に単刺、頭鍼(朱氏)で上肢区を中心に刺鍼。置鍼20分で終了。
状態を確認すると、手首は不随運動の腱鞘炎状態なので、不随運動が改善されれば痛みはなくなるので、痛みが引くには回数がかかると説明。

鍼治療2~3回目

左前腕は前腕屈筋群に刺鍼、置鍼。頭鍼は上肢区に刺鍼後、パルス使用で25分置鍼。
抜針後、上司の機能改善運動を行う。

鍼治療4回目

左指の対立運動が動くようになってきた。左手でOリングが可能になる。内転筋も動きが良くなる。しかし、まだまだ屈筋群のなかに動いていない筋肉はあり。
施術は前回同様

鍼治療5~6回目

頭鍼の上肢区から舞踏区に変更。全体的に左前腕の不随運動の頻度が少なくなる。

鍼治療7回目

徐々に左手不随運動が減ってきた。本人曰く、脳幹梗塞後からあった回転性めまいが、どんどん軽くなり、ついに無くなった。とのこと。
治療自体は脳の血管拡張による、仮死脳細胞の再活動化なので、ついでに改善されたのだろうと説明。

鍼治療8~15回

10回目の段階で、不随運動はほぼなし、左腕を使う際に小指のみ少し動く程度。不随運動が無くなると、少し指の拘縮がみられるので、普段から指の伸展ストレッチと指のマッサージをするように指導。
15回目の段階で、手首の痛みが完全になくなる。不随運動がなくなることで腱鞘での炎症が無くなった模様。

鍼治療16~21回(終了)

16回目時点で茶碗や化粧品が持てるようになり、買い物に行く意欲や自信が出たとのこと。
基本的に治療期間を3ヶ月で1クールで行う予定で進めていました。状態もかなり改善されているので、21回目(約3ヶ月)で一度終了する。

解説

この方は一般的な脳梗塞と違い脳幹梗塞の為、痙性麻痺が持続的に起こらず、連続的な痙攣のような筋収縮になってしまいました。その為、手指の腱が繰り返し動くので、腱鞘炎になり痛みや浮腫が起こってしまったのです。結果として不随運動が改善することで、腱鞘の摩擦による炎症が無くなり、痛みや浮腫は改善しました。まだ手指の機能改善は続いているので、ストレッチや運動はしばらく続けてもらう予定です。脳幹梗塞は脳梗塞と違い臨床報告や文献が少なく、手探りでの施術になりましたが、結果としては一般的な脳梗塞後遺症の鍼施術で十分効果が出せました。
脳梗塞後の麻痺や後遺症には鍼治療はとてもよく効きます。日本ではいくつかの病院や鍼灸院で行われていますが、あまり多くはありません。ですが、海外だと脳梗塞の後遺症には、鍼灸が普通に病院で行われています。日本は色々としがらみが多いので認知されないですね。もったいないですね、私自身や家族が脳梗塞になったら絶対やりますけどね。
今回の方は脳梗塞が起こってから、半年ぐらいだったことで改善が大きかったのですが、時間が経過するほど脳細胞が回復しずらく、症状も改善しずらくなります。理屈はリハビリと同じですね。片麻痺や脳梗塞の後遺症でお困りで、早めにお近くの鍼灸院にご相談ください。*鍼灸院のごく一部で行っているので、やっていないところも多いです。

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