鍼灸師向け解説

四十肩、五十肩の鍼治療

はじめに

北京堂鍼灸の四十肩、五十肩の鍼治療は、原因の筋肉にしっかり刺鍼こと、多く刺鍼することで、効率よく改善させることを重視しています。

少ない本数で低刺激な鍼治療にすれば、患者さんの負担も少ないと思われがちですが、

鍼の本数を多くして、1回の効果を大きくすることで、早く辛い症状から解放され、結果的に治療回数が短縮できます。

少ない回数になれば、時間的にも、精神的にも、金銭的にも負担が少なくなります。

「時は金なり」ではありませんが、現代人にとって休日の時間は大切な時間です。

少ない回数!短い期間!で改善させて、本人に再発を防げるよう、ケアのやり方を覚えてもらうことを、当院では目標としています!

「そんなんじゃあ、治ったら来なくなるだろ?」と考える治療者の方も多いと思いますが、

「治すことを徹底している」という信頼こそ大切だと私は考えます。

それに、私自身が受けたいと思う治療院は「時間をかけない、回数をかけない、必要なケアを指導してくれる」ことが理想です。

自分自身が受けたい治療を行わなければ、自信をもって患者さん勧めれません。

これから鍼灸師として技術を習得する中で、北京堂鍼灸(浅野式)の鍼治療が少しでも参考になればと思います。

四十肩についての説明ページはこちら

四十肩(五十肩)の鍼治療

四十肩の刺鍼

①首背中(四十肩の夜間痛)

四十肩なのになぜ首背中?と思うでしょうが、肩腕の神経は首の筋肉の間を通過して腕に至ります。

頸の筋肉の緊張が強くなると、神経を圧迫して肩や腕に痛みや痺れを出すことがあります。

特徴的な症状が五十肩の夜間痛です。夜間痛は「夜に首や肩の筋肉が冷やされたり」「睡眠時の筋肉内の血液流入量低下」が原因で筋肉の緊張が高まり、夜中や明け方に痛みが増すのです。

夜間痛が出る状態だと、首や上背部の筋肉が改善されてないと、それ以外の肩の筋肉を良くしても2,3日で元に戻ります。

これでは根本的な改善になりませんので、軽症ならいいですが、夜間痛が出るレベルで悪化している場合は、首背中の改善は必要です。

頸部の刺鍼についてはこちらを参考にしてください。

②棘上筋

棘上筋は肩甲骨の棘上窩から肩峰の下を通り大結節に付着します。肩の外転動作を行い、腕を下した状態から外側に腕を上げようとする初動作に痛みが出ます。

肩以上に腕が上がると三角筋の動きになるので、外転30~45度で負荷をかけて痛むなら棘上筋を痛めてます。

ただし、この動作では棘下筋でも痛むので棘下筋の確認も併せて行いましょう。それ以外には棘上窩を押して棘上筋の圧痛を確認します。鈍い痛みや鋭い痛みがあれば痛めているでしょう。

棘上筋の刺鍼は、棘上窩から肩峰の下を通過して大結節に向けて刺鍼します。

棘上窩から肩峰に向かって、2,5寸から3寸の鍼で刺します。太さは8番以上の鍼を使用します。(鍼先のコントロールを安定させるために、細い鍼は使わないのです。)

③棘下筋

棘下筋は棘下窩から大結節に着く筋肉で、棘上筋とほぼ同じようにつきますが、付着する位置がやや後ろに着くため、痛む位置が肩関節のやや後ろに感じ、外転外旋動作を行います。

確認動作は②の棘上筋と同じですが、親指を内側に向けて外転すると、より棘下筋に負荷がかかり解りやすいでしょう。

圧痛は棘下窩に出ます。棘下筋は奥が骨なので圧が分散せず解りやすいので特に参考にしてください。

刺鍼は肩甲骨の棘下窩に等間隔に刺鍼します。寸6から2寸の鍼を斜刺で刺し、肩甲骨に当てます。筋肉が平たく広いので、少ないと改善しにくいので必ず全体に鍼を刺します。

④肩甲下筋

肩甲下筋は肩甲骨の前面から小結節に着く筋で、上腕の内旋を行います。

肩甲下筋を痛めるとバンザイをするような、外転外旋動作で肩の前側に痛みが出てきます。

「肩が上がらない」状態はこの筋肉を傷めていることが多く、「頭が触れない」「頭まで腕が上がらない」と言って来院します。

筋肉自体が肩甲骨と肋骨に挟まれている位置にあり、マッサージや整体お灸などでは直接治すことが出来ないため、鍼が一番有効になります。

肩甲下筋の刺鍼は、うつ伏せで出来るだけ肩を上げた状態にします。

2.5寸から3寸、10番の鍼を関節下結節の足側に刺鍼します。出来るだけ骨ギリギリに打ち、ベット面に垂直に刺します。

刺入すると硬い筋肉に当たるのでそこで止めます。それを3本足側にずらしながら刺します。

肩甲下筋に関しては鍼がさせる範囲が狭く、悪化すると改善に回数がかかることが多いですので、可動域制限が出る前に鍼をすることをお勧めします。

*仰向けでは、肺を避けて烏口突起の下あたりから、肩甲骨前面に当てて刺す方法もありますが、これは直接指導する人から習った方がいいと思います。

⑤三角筋

三角筋は肩甲棘から肩、鎖骨の外3分の1から上腕骨にかけて着く大きな筋肉です。

動きは前方挙上、外転、後方挙上、内旋外旋のすべての動きに対応します。

ほかの筋肉の付着部を覆うように存在する筋肉なので、どの位置でも痛みが出て、動きや痛む場所では判別しずらいのです。

ただし、三角筋は圧痛で痛めているかがわかります。腕を台に乗せたような力を抜いた状態で、筋複を押して確認します。

前横後ろで痛む部分があれば、その筋繊維が痛めてます。あと90度の外転で負荷をかけて痛む場合も三角筋です。

三角筋の刺鍼は,]前後横に3本づつ刺鍼し、上腕骨をかすめるように外側を通過させます。

表面の筋肉より、骨に近い方が緊張が高いので、硬い筋肉に当たるように刺鍼転向させます。

前側はベット面にほぼ水平になりますので、鍼先は体幹に向けないようにして気胸を防ぎます。

8番以上の鍼で、鍼先のコントロールができる太さを使用してください。

⑥烏口腕筋

烏口腕筋は、烏口突起から上腕骨体に着く短い筋肉で、肩関節の前方屈曲を行います。

烏口腕筋を痛めると、前方から腕を上げる際に痛んだり、腕を後ろに伸ばそうとすると引き伸ばされて痛みます。

痛む場所は、肩の前側が痛みます。三角筋の前部繊維との鑑別が難しいですが、位置的に一緒に刺鍼できますので、同時に刺鍼する方がいいでしょう。

烏口腕筋の刺鍼は、仰向けで肩を45度以上に外転させて、烏口突起を触知して筋複の内側から、上腕骨前面をこするように刺鍼します。

肩に近い部分は筋が厚いので3インチぐらいの長さが必要になります。

置鍼と説明

治療内容と同じぐらい重要になるのが、「置鍼時間」と「治療の説明」です

置鍼時間について

鍼を刺して約10分以上すると、軸索反射による血管拡張が起こり、筋肉内の血流が改善されることで、筋肉は弛緩します。

なら鍼を刺して10分の置鍼でいいのか?駄目です!

血管拡張が起こっている状態を長く続けることで、筋肉内のうっ血した血液(酸素もATPも少ない)が血管に流れ、新鮮な血液(酸素とATPを多く含む)が新たに筋肉内に入ってくるのです。

10分経過したところからがスタートです!当院では約35分置鍼を行います。35分~40分ぐらいが、うつ伏せでいられる平均的な限界だからです。

ほんとかなと思う方は自分で腕や足に刺鍼して試してください。

ついでに、多く鍼を刺す鍼治療と、少なく差す鍼治療でも違いがはっきり出ますので、それも自身で体験するのがいい経験になります。

説明について

鍼治療についての説明はとても重要です。なぜなら、北京堂鍼灸の鍼治療は他の鍼灸院と比べて、「多く、深く」刺鍼するからです。

治療前には、「筋緊張が強いところほど、ズーンとした鈍い痛みが強くなる。これは筋肉の緊張が強いところほど、鍼が刺さって通過するときの摩擦が大きいからです。」ということを説明します。

これを説明しないと、「なぜ痛い治療をするのか?鍼を刺して、痛いところと、痛くないところがなぜあるのか?」と感じます。

治療後は、「鍼を刺したところは、鍼を刺したダメージで筋肉痛のような感覚になっている」と説明する必要があります!

これは鍼を多くしっかり刺すことで、「筋肉を緩める」ことと、「筋肉疲労を伴わない筋肉痛(筋肉修復)」状態になるからです。

筋肉痛の状態になると、1~2日ぐらいかけて一気に筋肉が回復して、柔らかい柔軟性のある筋肉になります。

筋肉が緩んでいる状態で修復するように、鍼治療後は「運動や痛い動きをせずに、痛くない体勢でゆっくり休むこと」が大切になります。

-鍼灸師向け解説