疾患への取り組み

骨化性筋炎 

  1. HOME >
  2. 疾患への取り組み >

骨化性筋炎 

骨化性筋炎(肉離れ後遺障害)について

以前、肉ばなれが1月以上たっても治らないという患者さんが来ました。

整骨院では筋肉のへこみ(筋肉組織が切れて重症になるほどへこみが大きくなる)がほとんどないことから、「軽症の肉ばなれです」と言われ、安静にして回復に努めていたらしいのですが、1月以上たつのに治りが遅く、歩くのにも痛く、階段は手すりにつかまって、やっと上がり降りできるレベル。このままじゃ競技に復帰できないと思い来院したとのこと。

これは単純な肉離れではありません。肉離れの後に起こる骨化性筋炎という症状です。

この方の話をよく聞き、触診、実際に鍼を刺すことで分かったことが、

①肉ばなれを起こしたのが、大腿直筋ではなくその下の中間広筋でした。大腿四頭筋の場合、表層の大腿直筋を肉ばなれ起こすことが多く、切れた繊維のへこみが感じ取れるのですが、中間広筋の場合、大腿直筋の深層にある為、へこみが感じ取れなかったと考えられます。

その為、重度か中程度の肉ばなれが軽症に間違われたのです。これは鍼を刺すことでわかります。痛めている筋肉は筋性防御などで緊張が強くなり、刺鍼時の鍼先の抵抗でわかります。大腿直筋は柔らかく、中間広筋は異常な緊張がありました。

この時点で、中間広筋の骨化性筋炎が起こっていると考えられます。単純に中間広筋の肉ばなれだけで、これだけ治りが遅いのは説明できません。

問診した際に「肉ばなれになった後も内出血の後も出なく、見た目は普通だった」とのこと。これは筋肉内で起こった出血が、皮下に散らないで筋肉内にとどまったという事です。これで起こるのが骨化性筋炎です。

骨化性筋炎とは、

骨化性筋炎とは、肉ばなれや打撲で筋肉を損傷した際に起こる出血が、筋肉内で血腫をつくり、血腫に含まれるカルシウムが骨に似た組織になることを言います。

筋肉内で硬い骨のような組織ができるのですから、当然その筋肉は柔軟性が無いので、伸ばしたり負荷をかければ痛みます。

骨化性筋炎が起こる原因の一つに「初期治療の対応の悪さ」があります。

受傷早期は、RICE処置をしっかり行えば、骨化性筋炎にはなりにくいのですが、損傷後も動き回ったり、RICE処置をせず放置すると筋肉内で出血が増えるので、骨化性筋炎になる確率が高まります。

損傷が重度だったり、深部であると血腫ができやすく、RICE処置を行っても骨化性筋炎になることもあるので、絶対にならなくするのはRICE処置だけでは難しいでしょう。*受傷後、2日ぐらいまでに鍼施術を行えば骨化性筋炎は防げると思います。鍼施術は患部の内出血を回収するのと、筋膜を貫くことで血腫を溜りにくくすると考えられます。

骨化性筋炎以外に、肉離れの後遺症で重症化する例があります。それはコンパートメント症候群です。これは肉ばなれや打撲で、筋肉内で出血が起こり、筋肉を分ける区画内で出血がたまることで内圧が高まり、大きな血管が圧迫されてしまい、患部から末端にかけて血液が流れなくなることで、循環不全が起こる症状です。

この場合、早急に内圧が下がるようにメスで皮膚と筋膜を切ります。コンパートメント症候群も絶対に防ぐことはできませんが、RICE処置で起こりにくくすることはできますので、肉ばなれや打撲の際は必ず行いましょう。

骨化性筋炎
骨化性筋炎の鍼灸治療

骨化性筋炎の具体的な治療方法は、直接損傷した筋肉に刺鍼します。本数は1cm間隔~3cmぐらいで、損傷部分で痛みの強い部分を、密に刺鍼した方法が効率よく改善します。

置鍼は35分から40分程度で、電気鍼やお灸は必要ありません。冬なら赤外線があればよいでしょう。

損傷した筋肉に刺鍼すると、患部の血管拡張が起こり、血腫などの回収が進むのと、筋肉自体の緊張が緩和されます。

デメリットとして、終わった後は1日くらい筋肉痛のような感覚になりますが、筋肉痛は筋肉が修復している合図ですので問題ありません。

筋肉痛が治まったら、ストレッチやリハビリを行います。鍼施術と運動(15分以内の超軽度)、ストレッチを繰り返すことで効率的に改善します。

上記した患者さんは、鍼施術を行うたびに出来る動きが増えました。3回ぐらいで階段の上り下りが普通に、5回ぐらいで軽いジョグ程度には走れるようになりました。

初期治療を鍼で行えば、こんなにかからなかったのですが、鍼灸はあまり認知されていませんし、第一選択に上がりにくいので仕方ありません。これを見た方は肉ばなれは鍼灸を第一選択に入れてみてください。効率的ですよ!('ω')

-疾患への取り組み