鍼灸師向け解説

腰の痛み、臀部の痛みの鍼治療

はじめに

北京堂鍼灸の腰痛、臀部痛の鍼治療は、原因の筋肉にしっかり刺鍼こと、多く刺鍼することで、効率よく改善させることを重視しています。

少ない本数で低刺激な鍼治療にすれば、患者さんの負担も少ないと思われがちですが、

鍼の本数を多くして、1回の効果を大きくすることで、早く辛い症状から解放され、結果的に治療回数が短縮できます。

少ない回数になれば、時間的にも、精神的にも、金銭的にも負担が少なくなります。

「時は金なり」ではありませんが、現代人にとって休日の時間は大切な時間です。

少ない回数!短い期間!で改善させる!本人に再発を防げるよう、ケアのやり方を覚えてもらう!これを、当院では目標としています!

「そんなんじゃあ、治ったら来なくなるだろ?」と考える治療者の方も多いと思いますが、

「治すことを徹底している」という信頼こそ大切だと私は考えます。

それに、私自身が受けたいと思う治療院は「時間をかけない、回数をかけない、必要なケアを指導してくれる」ことが理想です。

自分自身が受けたい治療を行わなければ、自信をもって患者さん勧めれません。

これから鍼灸師として技術を習得する中で、北京堂鍼灸(浅野式)の鍼治療が少しでも参考になればと思います。

腰痛、臀部痛についてはこちらを

北京堂鍼灸の腰痛治療

腰部 筋肉

脊柱起立筋(多裂筋)の刺鍼

背骨の両側にあり、首から背中を通過、仙骨に着くとても長い筋肉です。

背中腰をそらす筋肉で、背中を曲げると伸ばされて痛み、中腰の姿勢では上半身の重さを支えるために緊張し痛みます。

腰痛が出るのは、背骨の両側のオレンジの星の位置に出やすいです。痛めているかは、圧痛でも確認できます。

起立筋刺鍼

鍼治療は背骨の両サイド、中心から2センチのところ(体格により少し変わります。)に鍼を刺します。

高さは胸椎7番から、腰椎の5番まで約2センチ間隔ぐらいで打ち、5度くらい背骨側に向け椎弓に鍼先を当てて止めます。

これならそれ以上に鍼は進まず、肺や内臓を傷つけることはありません。

緊張が強かったり、痛む位置が脊柱起立筋の内や外だった場合は、2ライン、3ラインと増やします。

内側は棘突起の際当たり、外側は脊柱起立筋の外縁あたりから椎弓向けて45度ぐらいで刺鍼します。

筋肉の付着部である仙骨の部分でも、刺鍼して仙骨に当てて止めますが、仙骨には仙骨孔があり、そこに鍼が入ると足が痺れます。

なので、近くの鍼の深さを指標にして、あきらかに深い場合は、刺鍼転向して向きを変えます。

大腰筋による腰痛(ぎっくり腰)

大腰筋は腰を曲げたり、股関節を屈曲させる筋肉で、傷めると筋肉が伸ばせなくなるので「腰が伸びない」「腰を伸ばしていると腰痛が出る」「腰(股関節)を曲げていると痛まない」状態の腰痛になります。

痛む筋肉が深くにある為、腰の全体や奥に痛みを感じる腰痛になります。

左右の痛みはわかることがありますが、表層の筋肉と違いピンポイントで痛む場所はわかりません。

なので場所がはっきりしない腰痛は大腰筋が悪いことが多いです。

大腰筋刺鍼

大腰筋への刺鍼は、第四第五腰椎の棘突起間外4センチぐらいに、3寸ぐらいの鍼で直刺します。

第五腰椎は、腸骨稜に指を沿わせて、仙骨と交わるくぼみに3寸鍼を直刺します。

そして第三まで3寸、第二、第一では2,5寸の鍼で直刺します。

*赤点が刺鍼位置

大腰筋は上が細い扇状に広がるので、刺す位置は上部に向かって鍼を3ミリぐらい内側にします。

第三、四,五の高さの外側3センチのところにも腰椎の椎体に向けて斜刺します。鍼先は椎体に当てて止め、腸に鍼先が当たるのを防ぎます。

成人男性で3寸、成人女性で2,5寸、太っている人はプラス0,5寸足して鍼を選びます。

腸骨筋による腰痛

腸骨筋は腸骨の前面につき、大腰筋と同じく大腿骨の小転子に着く筋です。

大腰筋と同じく股関節の屈曲を行い、大腰筋と腸骨筋合わせて腸腰筋とも言います。

腸骨筋が原因の腰痛は、痛む部分がハッキリ解らない、腰を曲げたくなるように感じる腰痛です。

大腰筋と比べて、痛めることは稀ですが、長期間大腰筋が悪くなっていたり、足を上げるスポーツなどで痛めることもあります。

腸骨筋の刺鍼は、仰向けで膝枕を使い膝を90度屈曲にした状態で、腸骨の内側に骨を沿わせるように刺します。

鍼の長さは5インチぐらいの長さで、一番奥にある骨に当たります。

腰方形筋による腰痛

腰方形筋は第11,12肋骨から腸骨稜に着く筋肉で、体を横に曲げたり、腰をそらすのを支える筋肉です。

腰の両サイドに、平たく着いているので、腰痛を感じるのは、背骨から外8センチから10センチぐらいの外側に痛みを感じます。

腰が板のように広く緊張しているように感じる腰痛です。

腰方形筋刺鍼

腰方形筋の刺鍼は、第3腰椎の高さの起立筋の外縁、やや外側に腰方形筋が触れることができるので、そこからベット面にほぼ水平に刺し、椎弓に向けて刺入します。

必ず10番以上の太めの鍼を使用します。細い鍼だと重力に負けて腸の方へ鍼先が向かいますので、10番以上の太い鍼が必要なのです。

長さは男性なら4インチ、女性や細い方なら3インチでギリギリ届く長さです。

中殿筋による腰痛

中殿筋が原因の腰痛では、臀部のやや横側や腸骨両付近に痛みが出るため、両側の腰が痛む感覚で、腰痛と思って来院します。

股関節を曲げると引き伸ばされて痛み、中腰でも起立筋の補助になるので、負荷がかかり痛みます。

*青点が刺鍼位置のイメージ

中殿筋の刺鍼は、大転子から腸骨稜にかけて等間隔に刺鍼します。

大きい方は4本ずつ、小柄なら3本ずつ刺し、大転子から腸骨稜に向けて扇状に刺してきます。

腸骨稜は5センチほど、大転子側に寄せて筋肉に当たるようにします。

鍼は3インチから4インチを使用し、腸骨に当てて止めます。

棘間筋が原因の腰痛

棘間筋は腰椎の棘突起の間にあり、腰を伸ばす筋肉の一つですが、かなり細く短い筋肉です。

腰を曲げる動作で痛む腰痛で、背骨の中央が痛む場合は棘間筋を痛めてることが多いです。

棘間筋を痛める腰痛のきっかけは、重い物を運ぶことやスコップ作業のような腰の伸ばし動作で、負荷がかかる時に痛めます。

棘間筋の刺鍼は、痛めてる棘間筋を圧痛で確認して、そこに寸6~2寸の鍼で刺鍼します。

細かい筋肉なので、少ない数だと当たりずらいです。確実に当てるために、痛む部分を中心に密集して刺します。

圧痛がある位置に、0.5センチ間隔ぐらいで直刺します。

炎症があるところや、痛みの原因のところは鍼が到達すると、奥でズキンとした感覚があります。

棘間筋刺鍼

置鍼と説明

治療内容と同じぐらい重要になるのが、「置鍼時間」と「治療の説明」です

置鍼時間について

鍼を刺して約10分以上すると、軸索反射による血管拡張が起こり、筋肉内の血流が改善されることで、筋肉は弛緩します。

なら鍼を刺して10分の置鍼でいいのか?駄目です!

血管拡張が起こっている状態を長く続けることで、筋肉内のうっ血した血液(酸素もATPも少ない)が血管に流れ、新鮮な血液(酸素とATPを多く含む)が新たに筋肉内に入ってくるのです。

10分経過したところからがスタートです!当院では約35分置鍼を行います。35分~40分ぐらいが、うつ伏せでいられる平均的な限界だからです。

ほんとかなと思う方は自分で腕や足に刺鍼して試してください。

ついでに、多く鍼を刺す鍼治療と、少なく差す鍼治療でも違いがはっきり出ますので、それも自身で体験するのがいい経験になります。

説明について

鍼治療についての説明はとても重要です。なぜなら、北京堂鍼灸の鍼治療は他の鍼灸院と比べて、「多く、深く」刺鍼するからです。

治療前には、「筋緊張が強いところほど、ズーンとした鈍い痛みが強くなる。これは筋肉の緊張が強いところほど、鍼が刺さって通過するときの摩擦が大きいからです。」ということを説明します。

これを説明しないと、「なぜ痛い治療をするのか?鍼を刺して、痛いところと、痛くないところがなぜあるのか?」と感じます。

治療後は、「鍼を刺したところは、鍼を刺したダメージで筋肉痛のような感覚になっている」と説明する必要があります!

これは鍼を多くしっかり刺すことで、「筋肉を緩める」ことと、「筋肉疲労を伴わない筋肉痛(筋肉修復)」状態になるからです。

筋肉痛の状態になると、1~2日ぐらいかけて一気に筋肉が回復して、柔らかい柔軟性のある筋肉になります。

筋肉が緩んでいる状態で修復するように、鍼治療後は「運動や痛い動きをせずに、痛くない体勢でゆっくり休むこと」が大切になります。

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